舌で楽しむ江蘇 冬の食養生

冬の食養生に使う食材は決して高級食材じゃなければという事は無く、食材もそれぞれの特性が重要となる。例えば蘇州と徐州の羊肉、南京の鴨には非常に優れた温補効果があり、寒い冬日の熱々の羊肉スープや鴨肉スープは欠かす事の出来ない、食養生の一つとなっている。

蘇州 蔵書羊肉

蘇州の時節の物に注目してみよう。冬が来たら蘇州の人々が、まず思い浮かべるものは羊肉である。蘇州の街角では良く「蔵書羊肉」という看板のお店がある。蔵書羊肉は蘇州の木涜古鎮にある蔵書地方の農家が自家飼育している山羊を使った家庭料理で、この羊は脂身が少なく、素朴な味わいで都市の人々を魅了しており、街中にこの料理が食べられるお店がある。

蔵書羊肉は温補だけでは無く、味も非常に美味しい。本当の蔵書羊肉は2歳の羊の丁度良い硬さの肉質の物が使われる。百年木桶を使って1時間半じっくり蒸し煮した後、各特性調味料を入れると食欲を誘う香りが溢れ出し、羊のお肉は柔らかく、食べだすと箸が止まらなくなる。

徐州 羊肉スープ、シャータン(饣它汤)

蘇州の蔵書羊肉と比べて、徐州の羊肉スープは更に名高く。徐州以外の各都市でも街角で徐州羊肉スープ店を見つける事が出来る。冬に入ると、街角の羊肉スープ店は熱気であふれ、行列が出来る様子は、冬の風物詩となっている。その中でも、一番美味しい徐州羊肉スープはやはり本場徐州である。

羊肉スープの中の肉とスープは濃厚で且つあっさり。辣油や椒油、花椒面、塩、味の素等の調味料の小皿がスープと一緒に出てくるので、スープの中の肉を取り出して、これら調味料につけて食べるのがおすすめ。

徐州のシャータン(饣它汤)の中には沢山のスパイスが入っており、冬でもこれを食べれば体はすぐにぽかぽかになる。これには肉と雑穀と澱粉が入っており、調味料と煮ることでトロトロで熱々のスープが出来上がる。生卵が一緒に出てくるので、これを入れて混ぜてで食べると更に美味しい。

南京 麻鴨スープ

麻鴨スープを飲む食養生は南京では古くからの風俗習慣で、鴨の都として有名な南京では鴨の様々な食べ方が編み出されている。

深秋が始まると、大根と鴨の煮込みスープが丁度食べごろの季節で、熱を冷まし、肺を潤し咳止め作用がある。

漢方では、秋の乾燥が最も肺を痛め、この時期になると鼻咽が痒くなったり、イガイガして、咳や痰が出て、喘息などが起こり易いと言われているが、この時に鴨スープを飲むことで体調の調整が出来る。

常州 天目湖砂鍋魚頭

本物の天目湖砂鍋魚頭を食べたければ、常州の溧陽市天目湖景区付近まで来る必要がある。そして本当に美味しい物を食べたければ、山水の間にある村落まで足を伸ばそう。美味しい物にたどり着くには少し努力が必要だ。

天目湖砂鍋魚頭には湖に生息するコクレンという淡水魚が使われる。この魚は頭部分は大きく脂身がたっぷりで、の身は淡白で、砂鍋魚頭には頭部分が使われるので、淡水魚の特徴である骨が多いという問題は無く食べやすい。頭は砂鍋で長時間かけ弱火でじっくり煮込まれ、旨味は全てスープに溶け込んだスープは綺麗な白濁色となる。頭に含まれる豊富なタンパク質と脂肪は良質で低カロリー、漢方の観点では魚スープは胃を温め、美容美肌効果があると言われている。

南通 黄焖狼山鶏

狼山鶏は南通市の地元の鶏品種で体は大きく、肉質はしっかりしている。調理方法は沢山あるが、黄焖の調理方法が最も人気。黄焖とは鳥肉に醤油、オイスター、生姜、大蒜、菌、ピーマン等と調味料を入れ、鶏肉が柔らかくなってしっかり味が染み込むまで煮込んで作られる。漢方では鶏肉は体を温め、秋冬に適した食材とされており、特に狼山鶏は脂肪も少なく、更に健康的で美味しい。

食べ物は、私達のDNAに深く深く刻み込まれた記憶。舌で味わう飲食文化、食べ物は一種の文化であり、そして旅の思い出でもある。寒い冬、一皿の羊肉が体を温め、一杯の魚スープの滋養、そして一羽の鶏の、美味しい料理が、あなたを幸せにし、更に健康にさせてくれるだろう。さあ早くこの深淵な中華料理文化を味わう旅に出よう。