窯湾—古き良き古鎮の濃厚な香り

食文化はその地域の歴史的繁栄と大きく関係する。 また、多くの食資源を有する必要があり、これら条件が整うと大きく食文化は発展する事となる。 窯湾古鎮は幸運にも条件に恵まれ、多くの美食を残してきた。 花の香りが満ちる春、窯湾古鎮は独特な香りに包まれる。

醸造される香り—甘油

甘油とは窯湾の生んだ独特な調味料で、見た目は醤油と似ているが、味は醤油より少し甘く、香り高い。 厳選した大豆と小麦粉を瓶に入れ、水と塩を加え180日ほど寝かして作られる。 醸造に使われる瓶にも特徴があり、老舗の「赵信隆酱园店」には300年以上前の瓶が昔ながらのやり方で風雨を防ぐために笠を被せられて実際に使われている。

長い時間を掛けて作られる甘油は非常に美味で旨味は化学調味料の10倍あり、生魚、エビ、野菜などと合う。 また健康にも良く漢方医によると、甘油の成分が精力増強、胃腸を整え、血圧に良いと考えられており、窯湾古鎮に長寿の人が多いのも甘油と関係するのではと言われている。

酒の香り——緑豆焼酎

緑豆焼酎は窯湾で作られる健康酒で、緑豆という名前の由来は、このお酒が緑豆のスープと同じ色をしているのが由来で、原材料では緑豆は使われていない。

古鎮の「華棠酒坊」(緑豆焼酎展示館)では現在でもこのお酒を醸造しており、高品質の白酒をベースに砂仁、桂花、杜仲などの様々な薬材に、蜂蜜、氷砂糖を加えて作られる。 苦味と甘さが混じった味で、飲んだ人はなんとも言えない良い心地になり、目が覚めるような感じがある。

緑豆焼酎には伝説があり、乾隆帝の南巡を終え、北京に戻る際に窯湾に立ち寄り、この地が大変栄えた様や、船舶が往来する様を見学し、食事の際に出された緑豆焼酎を見て「これはお茶かお酒どちらだ」と質問し、官司がこれは緑豆焼酎というお酒ですと答え、乾隆帝はとてもその味を気に入り、それ以降このお酒は皇帝へ献上されることになった。

素晴らし食事には、美酒がセットである。 美食が人々にこの地域の味を、美酒はこの地域で起こった歴史物語を語ってくれる。 どこか甘く、どこか塩辛い窯湾の名産物である調味料達は、この地独特の物で真似は難しく、こういった限定された場所でしか味わえない窯湾の「香り」は、舌の記憶として旅の楽しみの一つである。