茶香漂う常州、美しい4月

江蘇省の最も快適な季節となる春を楽しむには、4月まで気長に待つ必要がある。 冬の寒さを乗り越えると、春風が顔を撫ではじめ、草木は色付き、燕の鳴き声が聞こえてくる。 常州の春は一面緑に包まれ、その中緑の中でも人々は濃緑な茶芽の緑を見逃す事は無い。山谷が満面の緑になる頃、常州に本当の春が訪れる。

中国唐時代半ば、常州はすでに当時最高水準の製茶技術を持ち、作られた白茶は宮廷への献上品となっていた。 しかし、本当にお茶を愛する人達は、献上品であった事やお茶のブランドには拘らず、その素晴らしく爽やかな新茶の香りを求めて常州を訪れる。

溧陽白茶

白茶は中国で生み出されたお茶の一種で、伝統的な六大中国茶の一つである。 このお茶は摘み取り後、青み消しと揉みの工程を省略し、日干し、乾燥の工程のみを経て作られる。

常州では毎年、清明節の時期に山へ足を踏み入れると、遠くまで一面に薄緑、若緑、黄緑、青緑、深緑の茶畑が広がり、竹かごを背負った茶娘が忙しく作業する姿を見ることが出来る。 茶娘達は、茶畑の中を軽快に移動しながら、両手で器用に素早く茶葉を摘み取り、優しく背中のかごへ入れていく。

溧陽(りつよう)天目湖産の白茶は中国の十大名茶のランキングには入ってないが、非常に人気があり高い評価を受けている。 白茶はお茶の中でも希少な部類に入り、特別に良い環境でしか育たない為、天目湖では白茶の育成に最適な環境条件が作られてきた。 現在、天目湖は常州で目玉の観光スポットでもあり、国から保護されている特級クラスの水源地でもある。茶樹が育つ土壌はセレン量が1キロ辺りに1ミリグラムを超えている必要があり、優良な土で育った茶葉はより健康に良く、溧陽のお茶は特に多くのアミノ酸が含まれるので、女性に非常に人気で、美容茶とも呼ばれている。

金壇雀舌(きんだんじゃくぜつ)茶

よほどお茶に詳しい人でなければ「金壇雀舌茶」という名前は聞いたことがないだろう。このかわいい名前はその茶葉の形が由来で、雀の舌のように小さく平で、先が尖った形をしている。雀舌茶は茅山(ぼうざん)にある茶畑で作られ、ここにあるいくつかの茶園は「中国で最も美しい茶園」に選ばれている。茶園は道路で綺麗に二つに分けられていて、整然とした美しさがあり、高い所から見ると、緑の海のようで、茶樹がまるで波のように見える。 ここを訪れた観光客は江南の伝統的な、青い印字された服に着替え、茶摘み体験をすることが出来る。 摘み取った新鮮な茶葉は作業場へ盛っていき、竹ザルの上で広げられ、辺り一帯に素晴らしい香りが広がる。

雀舌茶を楽しむにはガラスグラスを使うのが最適で、香りと共に茶葉がお湯の中で美しいバレイを踊っている様も楽しむ事が出来る。 茶葉から出る清らかな緑色は春の日差しを含み、香りと味を一層良いものにしてくれる。

春日和の頃、仲の良い友人と一緒に一つのテーブルを囲み、淹れたてのお茶をゆっくりと味わえば、小さな茶葉の1枚1枚が、常州の春の静かで、穏やかな雰囲気を存分に楽しませてくれるだろう。