不可欠な儀式感、本場の蘇州の冬至夜を過ごす

毎年の12月22日ごろは冬至で、冬至は中国の二十四節気の22番目である。地理的に、この日、太陽光が南回帰線を直射するため、北半球で夜が最も長い日であるが、北半球の昼が徐々に長くなるのもこの日からなので、冬至は一年の新しい気風の始まりも意味する。

冬至は新年に匹敵

古代の周王朝はこのような暦を採用し、冬至を新年としていた。周泰王の二人の息子--泰伯と仲雍は呉に来て、周王朝の暦を蘇州に持ち込んだ。秦の始皇帝が中国を統一した後、旧暦12月の最後の日を歳末としているが、蘇州の人々の心の中で、冬至は依然として重要で、「冬至大如年(冬至は新年に匹敵)」、「肥冬痩年(冬至には贅沢して、年越しには節約する)」の言い方まである。

蘇州の人々は時季の儀式感を最も重んじる。祖先を祭り、お互いに拝み、一家団欒の食事をするのはすべて冬至の前夜、すなわち冬至夜に行われなければならない礼儀である。家々は先祖の供養をし、子供たちは新しい服に着替えて目上の人のお目にかかり、これは「賀冬(冬を祝う)」と呼ばれ、幸運と喜びを図るためである。残念ながら、現代の人々は、次第に冗長な礼儀を重んじなくなって、団欒の食事だけを最も重要な儀式としている。

 

食べ物に込められる喜び

団欒の食事、その名のとおり、家族が揃って一緒に食べる食事のことである。そして冷たい料理であろうと、熱い料理であろうと、鶏肉、鴨肉、魚であろうと、すべて縁起のよい名前に置き変えなければならない。人々の新しい一年への祝福と吉祥が込められる。

蘇州式暖鍋は冬限定の料理で、特製の銅の鍋を使って、周囲にだしと半製品の料理を盛って、真ん中の炭火を熾し、新鮮な野菜や果物をだしに漬けて温めることができるだけでなく、保温の役割も果たせる。鍋によく入れる食材も喜びの意が込められる。たまご餃子は元宝、肉団子は団欒、春雨は金鏈条、ダイズモヤシは如意菜、魚は「有余(余裕がある)」と呼ばれる。さらにご飯の中にクログワイを埋めて、元宝飯と呼び、食べるときは、箸でクログワイを掘り出すため、「挖元宝(元宝を掘り出す)」の意味が託される。

写真by:刘振 江南老开心

主食はワンタンである。丸いワンタンの餡と四角いワンタンの皮は、それぞれ天は円く、地は方形であるという古代中国の宇宙観を象徴する。包まれると、天地の区別がつかない混沌とした世界となり、食べると混沌から逃れ、無事で真新しい一年を迎えられる。

酒で冬に敬意を表す

秋から、蘇州の人々は冬至の日に飲む美酒を用意し始める。家の前で香りを漂させる金木犀を長い竹竿で振り落とし、丁寧に集め、平らに広げ、風で乾かした後、もち米、クチナシ、酒麴を入れて一緒に発酵させる。数ヶ月もかからないうちに、木犀の香りを漂わせる冬醸酒は冬至と一緒にやってくる。

写真by情调苏州

現在の人々は面倒が嫌いで、ほとんど自ら醸造せず、元大昌に行ってばら売りの酒を買うようになっている。これは「零拷」と呼ばれる。並んでいる行列を見ると、蘇州の人々のおおらかさがわかる。みんなは家から異なった容器を持ってきくる。若者は空のコーラボトルを持って、少量の酒を買って軽く飲むかもしれないが、年寄りは、空の醤油樽を提げて家族のために少し多めに買う。ばら売りの冬醸酒を買った後、向きを変えて隣の鹵菜(ルーツァイ)店に行って、酒のおつまみを買ってくる。燻製の魚、アヒルの煮込みは、美味しくて歯ごたえがあり、酒を飲みながら食べれば、家族と長くおしゃべりができる。空気に漂う酒の香りと月の光が絡み合って、まるでほろ酔いの蘇州の普段の日々のようである。一年のよい時期はあっという間に過ぎ去って、すべての過去の出来事はこのお酒とともに、一気に飲み干す。

写真by情调苏州

たらふく飲み食いした後、「占晴」をしよう。即ち、「干浄冬至邋遢年、邋遢冬至干浄年」ということわざに従って天気を占うことである。冬至前後に雨や雪が降れば、大晦日は晴れ、逆に冬至前後に晴れれば、大晦日は雨や雪が降るという意味である。じゃ、蘇州にいらっしゃる日、天気はどうであろう。