光と影のなかで出会う、美しき南京

降り注ぐ陽光のもとでは、万物はそれぞれ独自の影を持つ。それが光と影の効果だ。そして撮影の際、光と影の美学は色鮮やかで美しい現実世界を抽象化することで、素朴でさっぱりとした美しい色味を引き出す。本来の写実的で複雑な色彩よりも、より簡潔で、純粋で、一味違った抽象と距離の美しさを作り出すのだ。

大自然とはとても不思議なものだ。泉の水から聞こえるこぽこぽという音に、人々の楽しげな笑い声が聞こえてくる。水に浮かぶ森林のなかで、踊るように漂い落ちる葉を感じる。美しい大空を飛んでゆく渡り鳥を眺める。変わりゆく季節に伴って、自然はそれぞれ違った色彩と様相を見せてくれる。そして私たちはそれぞれの季節に旅行に出て、それぞれ異なる体験をすることができる。それらの風景を私たちは一対の目で見るだけではない。心で感じ、またカメラで記録して、夕日の下に広がる光と影の写真の中に南京の記憶を消えぬよう留めるのだ。

珍珠泉

珍珠泉の泉水孔はわずかな石の隙間にある。ここからこんこんと湧き出た幾筋もの水は、やがて真珠の首飾りのように淀みない一筋の流れとなる。珍珠泉という名の由来だ。珍珠泉は長江の北、老山の麓にある。その優れた水質と人の心を喜ばせる風景で「江北一の遊覧地」と呼ばれている。

中国人はいつもコインで自分の運勢を占うのが好きだ。縁起のいい場所に出会うと、コインを一枚投げる。そうすることで幸運がやってくるような気がするのだ。さて、珍珠泉の水源である石壁には水の中へと伸びる石がある。伝説によれば、これはこの天と地を守る白龍の頭であるとされている。ここを訪れた人々は大人も子供も岸辺に立ち、狙いを定め、われこそ泉のなかにコインを狙い通りに投げ込もうとうずうずしている。人々が投げたコインは水の流れに翻弄されながらも、やがては竜の頭の上に落ちゆくのだろうか。

泉水の源である“たまり”と比べると、静山湖はだいぶ広々としている。青々とした山々に囲まれ、外界と隔絶されたここに、外の世界の喧騒は届かない。湖面を眺めると、竹で編んだいかだをゆっくりと漕ぐ人が見える。穏やかだった水面が船を進める竹竿によって波立ち、波紋が広がっていく。もし山登りに興味があるなら、ここはうってつけだ。山頂には北京八達嶺の長城と同じ1:1の比率で作られた定山長城がある。城壁のいちばん高いところに立つと、老山の広々とした風景がひと目で見渡せるので、「カシャッ」と記録しておこう。

池杉湖国家湿地公園

湖の真ん中に目をやる。濃い霧は未だに晴れていない。湖面には枯れたハス、萎びたハスの実が頭を垂れ、それぞれ違った姿を見せている。ここに一年四季を通して林立しているヌマスギ(池杉)にとって、ぱっとしない他の季節と比べると、秋冬こそが主役を張れる季節になる。秋冬のヌマスギはいちばん美しい。高く大きくそびえ立った様子は、まるで半開きの巨大な赤い傘のようだ。水面に映るヌマスギのなかを、カモの群れが悠々と泳ぐ。彼らはこの水辺の風景を独り占めしているのだ。

池杉湖国家湿地公園には5万株あまりのヌマスギがあり、独自の観賞価値を有する「水上の森」を形成している。

桟道をゆっくりと歩いてみる。あるいは湖水の中央へとゆっくりと進んでいく小舟に乗って、水上に広がる木々の深みへと入ってみてもいい。すると、ずらりと並んだ大小まちまちなヌマスギが目を楽しませてくれる。林には様々な動物たちも隠れている。よく目にするのは、ウ、サギ、カモなどの水鳥だ。ヌマスギ林に身を置いて吸う空気はとても清浄で、水の深くへと倒影する木々に、林の鳥たちの声が合わさり、心はこれ以上ないほどリラックスし、気持ち良い。おすすめは、ドローンを持ち込んで空中へと視野を転じて大空の視点から眺める、紅葉に染った大地の風景だ。

石臼湖で渡り鳥を見る

石臼湖は南京のメインエリアから少し離れているが、しかし人々はわざわざ地下鉄で行くのを好んでいる。というのも、湖の真ん中を石臼湖大橋が架かっていて、湖面をゆっくりと走る列車からは、大空が映る限りない湖面が一望できるからだ。まるで『千と千尋の神隠し』のワンシーンである。

南京南駅から地下鉄S1号線に乗り、翔宇路南駅でS9号線に乗り換える。石臼湖大橋が架かっているのはS9号線の明覚駅と団結圩駅の間、この間約10分間、車窓の前に立つと、混じりっけなしの風景を静かに脳裏へと収めることができる。

列車を降りたあとは石臼湖堤垻(堤防)か、近くの村に足を運ぼう。本格的な撮影機材を抱えて狙うは石臼湖湿地、シャッターで捕らえるべき獲物は冬の日の精霊たちだ。南の地であるここには毎年冬になると渡り鳥たちがやってくる。タカブシギ、ハクチョウ、マガン、タンチョウヅルなど、さまざまな鳥が群れをなして北方から石臼湖へと飛んできて、体を休め、英気を養い、そして翌年4月になると再び北へと帰っていく。鳥たちは休息し、エサを探し、繁殖しながら、ひと冬をここ石臼湖で過ごすのだ。石臼湖では現在約200種の鳥類が観察されている。さて、あなたのカメラは何種類の渡り鳥たちが飛翔する姿を写すことができるだろうか。