泰州、時間と生活がゆっくりと流れゆく街

急速に発展するこの時代、「スロー」で有名な街はどこかという話題になれば、きっと泰州の名も挙がることだろう。悠久の歴史を擁するこの文化の古城は、歳月の入れ替わりのなかでも自分のペースを変わらず保ち、まるで暖かで落ち着きある知者のように悠々自適の生活哲学を以て、ここに住む人々一人一人を守ってきた。ほどよいリズムで住民たちに浮世の幸福と平和を感じさせる街、それが泰州なのだ。

忙しない生活リズムに疲れを感じたなら、自分にちょっとした小休暇をプレゼントしよう。そして泰州を訪れ、詩意ある生活へと帰ってみよう。ここの老街と呼ばれる古い町並みは、朝早く訪れると濃厚な朝のお茶の香りが漂っている。昼の湿地に足を運ぶと鳥が羽ばたき、虫が鳴いている。そして夜になると、古い路地ではゆっくりとした静けさと賑やかなざわめきとが同居する。夜明けの薄明かりと夕暮れの間で、きっとあなたは水の街のスローライフが持つ味わいに酔いしれることだろう。

早朝の泰州老街

早朝、その日最初の陽光が一筋こぼれ落ちると、泰州の老街は光の中でゆっくりと目を覚ます。この600メートルにわたって伸びる路地は、古風で素朴な雰囲気を漂わせている。花崗岩を平らに切り出して敷き詰めた石畳の道、軒を連ねる赤くて古い再建造物、高々と架かった赤提灯……明清の時代にタイムスリップしたかのように錯覚させる、歴史の長廊だ。

時刻はまだ早いが、すでに老街はだんだんと賑わいを見せはじめている。行き交う車の音、スマホの着信音、長く響き渡る売り子の声、そんな雑多な音が絶え間なく耳に響く。茶館に入ると、そこではすでに賑やかな光景が展開されている。泰州の人々の一日は朝の一杯のお茶から始まる。甘く爽やかな口当たりの燙干絲(薄く圧縮した豆腐で作る泰州の軽食)、濃厚な肉汁を柔らかな皮で包んだ蟹黄湯包(カニみそ入りの小龍包のようなもの)、新鮮で深い味わいスープが美味しい魚湯麺、そしてそこに甘く芳醇なお茶を合わせると、泰州の豊かな味わいに包まれながら、自分のペースで、すっきりとして爽やかな一日を始めることができるのだ。

お茶と食事を済ませたあとは、老街をゆっくりと歩いてみよう。数多くの老舗や古店が軒を連ねるそこには、泰州の無形文化遺産や民間芸術家がたくさん集まっている。万年筆の修理工や時計職人など、泰州で古くから経験を重ねてきた手工芸職人の技をその場で見ることができるし、展示館では面塑(小麦粉やもち米の粉を練って作った生地で作る塑像)、草編(植物を利用した編み物細工)、空竹(唐コマ)回しなどの伝統工芸品を見ることもできる。ぶらぶらと歩き、ときどき立ち止まりながら、評書(講談)を鑑賞したり、古劇を聴いたり、路地に隠れている個性的な小喫(軽食やおやつ)をまた味わってみたりすれば、濃厚な市井の雰囲気のなか、老街の悠然とした朝の趣を味わうことができるはずだ。

昼の溱湖湿地

朝、老街で朝食と朝のお茶を済ませたあとは、溱湖湿地公園に行って、ゆっくりと歩きながら大自然の清浄な空気を吸おう。泰州市姜堰区区内に位置する溱湖湿地公園は、古くから水郷明珠の呼び名を持つ。ここでは河が網の目をなすように交わり、水面は鏡のように清らかだ。湖には島、中洲、干潟が夜空の星のように浮かび、ガマが茂り、強い生命力に満ち溢れている。

遊覧船に乗って湖を行くと、新鮮で爽やかな空気がどっと顔へと押し寄せる。傍らのアシの茂みは風に合わせて揺れ、機敏な水鳥たちが大空と大地の間を羽ばたきながら旋回している。船娘と呼ばれる女性船頭が漕ぐ櫓の音色を聞きながら、船は蛇行しながら「水上の迷宮」を抜ける。すると、心は思わず大自然の原始の息吹に浸ってしまうのだ。

船を降りて林に入る。草木が青々と生い茂る湿地の奥ではときおり鹿の鳴き声が聞こえ、木々の中ではエサを探して地面を掘るシフゾウの姿が目に飛び込んでくる。シフゾウは溱湖の大切な特徴となる動物だ。彼らは河や草地、林で放し飼いにされていて、悠然とエサを探し、遊びを求めながら日々を過ごしていて、その様子は極めてのんびりとしている。シフゾウの他にも、コクチョウ、タンチョウヅル、ワニ、レンカク、アオサギなど、希少な動物たちがここで優雅に生活している。また、多くの野鳥たちはここを理想の住処としており、その詩の趣ある環境で生活・繁殖している。。

昼の溱湖湿地に響いているのは、森林が奏でる協奏曲の律動だ。自然が紡ぐ音符のなか、静かで、清く、味わい深い、そんなゆっくりとした時間を探してみよう。

夜の八字橋文旅休閑街区

昼、大自然のなかで心身を洗い清めたあと、夜になったら八字橋文旅休閑街区に行って街に溢れる市井の空気や人間模様を感じてみよう。八字橋文旅休閑街区は興化旧市街の中心にある。深く入り組んだ静かで小さな路地は、両側に明清の古建築がずらりと立ち並び、昔ながらの里下河地区の独特な水郷の民俗風情がにじみ出ている。ここには興化市博物館、鄭板橋・范仲淹記念館、李園船庁、四牌楼、興化県署などの観光スポットがある。灯りが煌く古い街並みや路地を行き来して、鄭板橋の書画を吟味したり、『水滸伝』の淵源を辿ったり、江南独特の私家庭園芸術や精巧な骨董宝物を味わったりしてみよう。きっとたちまちあなたの心は百年の時を越えてしまうはずだ。

夜の八字橋街区は生まれつきの戯曲舞台でもある。李園船庁に足を運んで省級の無形文化プロジェクトに選定されている『板橋道情』を聞いてみよう。古朴で優雅な環境の中、中国の伝統文化芸術が持つ魅力を感じることができるだろう。あるいは、興化県署で淮劇(江蘇省淮安周辺を起源とする伝統劇)の優れた短劇『板橋放粮』を鑑賞して、興化の歴史と文化を深く体験するのもいい。ここでは他にも水郷興化の伝統的な労働の情景を展示する『垛上謡』を公開していて、訪れる人々のために目と耳で楽しむ類なき盛大なパーティを準備している。ちょっと疲れたときは、城内の東大夜市で足を休め、屋台で地元の小喫(軽食やおやつ)を味わってみよう。特色ある文化クリエイティブ産品を見て回ったり、水郷の気分に浸りながらロマンとゆとりあるナイトライフをゆっくりと味わうのもおすすめだ。