絵のような江南の風景に春を“たずねる”

春の江南と言えば、霧雨、杏の花、人家、古道に青瓦、そして白壁だろう。遠くには山々や田園風景が広がり小川が流れている。このような気ままに流れる春模様は、筆にたっぷりと墨をつけて詩情とロマンに満ちた味わい深い絵巻物を描くに足るものだ。蘇州は典型的な江南の街の一つであり、江南の美しさと精華は蘇州にある。さあ、この春はなにがあっても蘇州に足を運ぼう。

春雨のあと、天気が晴れ上がると、枝先のつぼみたちはメッセージを受け取ったかのように各種色鮮やかで美しい花を咲かせ、まるで点描画のように蘇州の街を飾っていく。生い茂る草木は緑である。ゆったりとした水辺は青、夢幻の桃色、ロマンチックな出会いを期待させる紫……自由自在に筆を走らせると、息を飲むほど美しい絵巻物が描き出され、それがまた生活に彩りを添えるのだ。こうして様々な色が交錯しながら、うるわしい江南の絵巻物が少しずつ紐解かれていく。さあ、いまこそ絵巻物のなかへと一歩踏み出し、江南のいちばん美しい風景を探しに行こうではないか。

拙政園に春の訪れ

拙政園は中国四大名園の一つで、蘇州に現存する古典園林のなかでは最大の面積を擁する。その優れた人文環境により、ここは古代文人たちにとっては詩を吟じ絵を描くには理想の場所であり、そしてまた彼らと園林の数多くの美談を生み出す場となったのである。明朝の画家文征明は文人画家としての美的感覚と中国山水画の思考様式を用いて拙政園のレイアウトを考え出し、自然の趣に満ちた静かで安らかな空間を作り出した。そんな園内を巡ると、まるで詩を品定めしたり絵画を鑑賞しているかのような印象を受ける。

また、木々や花々も園林に欠くことのできない構成要素であり、それらの季節性を利用して四季おりおりの景色を構成というのが蘇州古典園林でよく利用される造園手法である。この時期の拙政園ではシダレヤナギ、モモ、サクラ、カイドウ、オウバイ、ユキヤナギなど春の代表的な木々や花々がすでに息を吹き返しており、濃厚な春の雰囲気が凝縮されている。3月の温かな風が拙政園に吹き込むと、一瞬のうちにモモの赤がヤナギの緑を引き立たせ、雪のように白いサクラは香り、ピンクのドレスで着飾ったカイドウが揺れる。そして散って水面に落ちてしまった花もまた無尽の温かさを感じさせるのだ。

百花繚乱上方山

蘇州市太湖のほとりの石湖景区内に位置する上方山国家森林公園は一年四季を通して常に美しい山水風景を味わえる場所である。3月、上方山は一年でもっともきらびやかな季節を迎え、万物がよみがえる。草木は新芽をのぞかせ、アンズ、サクラ、モモ、ナシ、カイドウ、チューリップ、ラッパズイセン、オオアラセイトウなど各種春の花が競うように咲き乱れ、山全体が色鮮やかで美しい眺めになる。また、年に一度の百花祭りも開かれる。開催期間3か月の間、ここを訪れる人々は花々に取り囲まれる。花の世界に没入し、一歩進むごとに風景が変わる。まるで夢のような江南風景に酔ってしまうことだろう。ほかにも石湖に行って小舟を浮かべるのもいい。山林に囲まれながらゆっくりと漂うと、ことのほか心地よい。

このほかにも上方山は生態環境が非常に優れている。花見のあとは登山をして新緑を楽しむのも悪くない選択だ。密に茂った森林の歩道を登っていくと、ひょっとしたら林間で遊ぶ野生のアカゲザルに出会えるかもしれない。山頂まで登ると公園全体の風景を飽きるまで眺めることができる。もし人文や歴史がお好きなら、山頂には歴代の遺跡である古塔、寺院、書院、山荘、庭園などが残されている。ひっそりと静まり返った昔のあれこれを訪ねに行くのもいいだろう。

江南から錦渓までゆったりと巡る

「江南好し 風景旧より 曽て諳んず」。江南の風情を体験したいなら、蘇州はこれ以上ない選択だ。昆山市の南はずれ淀山湖湖畔にある錦渓古鎮は千年の歴史ある江南の水郷である。ここでは村全体の小川を経て一本の水の流れが成っており、その様子がまるで錦の帯のように美しいことからその名がついた。錦渓古鎮に現存する建築物の大部分は明・清、そして中華民国の時期に建てられたもので、ほとんどは水に依り水に面して建てられている。部屋の多くはレンガと木を組み合わせた1~2階建ての砖木結構で、青レンガと白壁、そして水に面したドアや窓、または船着き場を備えている。古鎮の主な商業街は河に沿った2本の通りから形成されていて、そこを抜けると古鎮の内部へとまっすぐ向かっていく。店舗や人々の装いは統一されていない。足を運んでぶらぶら歩いてみれば、江南の水郷の混じりっけない静かな安らぎを感じられるはずだ。

歩き疲れたら麺屋に入って錦渓の特色グルメ奥灶麺を味わってみよう。新鮮なニワトリ、タウナギの骨、豚骨を煮込んで取ったスープに腰のある蘇州式麺を泳がせ、エビや肉などで作った「澆頭」という具を乗せる。春の味わいが心も胃も満たしてくれる一品だ。