南通—都市の夢幻花園

南通のリズムは大都市とは違い、ゆっくりとした生活となっている。朝は鳥の声を聴き、夕暮れは河辺を散歩、四季に合わせた自然を愛するといった人々の生活習慣が自然に街のリズムを作り上げているのだが、都会の人々にとっては、まるで魔法にかけられたような魅力をもっている。その秘密を探るために、敢えて観光情報に合わせて、都市の花園と呼ばれる南通を探ってみよう。

南通市は江蘇省東南部の長江の河口、長江と黄海の間にきらめく、“黄金水道”と“黄金海岸”の間にある。 高い山や珍しい風景などは無いが、街の中に緑が豊富で、曲がりくねった堀が街を取り囲み、控えめな街に隠れた煌めきが見える。

濠河秋色

濠河は元々通州(南通の古称)の堀川であった、歴史資料によると都市の建設と同時に作られたとあるので、既に千年以上の歴史を有している。

古代堀川は外部の敵から都市を守るために作られたが、歴史の流れの中に都市は発展拡張し、堀はその本来の役目を終え、千年の現在南通の都市を彩る風景となった。全長15kmの濠河はひょうたん状になっており、まるでネックレスのように都市を巡り、秋風の吹く頃、風が心地よい安らかな風景を作り出している。

濠河を楽しむクルーズは夜がおすすめ。ライティングが始まると船からの眺めはライトアップされる街と河面が輝く幻想的な風景である。

濠河周辺には昔からの建物が残っており、百年前の庭園建築などがあり、その中に現代的な建物の環濠河博物館がある。ここでは南通の歴史や無形文化遺産などが展示されている。秋風が河面に波紋を作り、河には28本の橋と河沿いに立つ有名な古樹が紅葉に染まり、古風な風景をより一層引き立てている。

洲際緑博園

濠河から東に向かうと、テーマパーク型総合植物園がある。ここでは世界各国の珍しい植物が展示されており、それらの植物にも心を動かす物語を持っている。入り口にはアニメチックなサボテンの模型があり、子どもたちを喜ばせている。更に大型の地球儀とその周りに噴水があり、音楽に合わせて水のカーテンを作り上げ、植物園を訪れたテンションを更に上げてくれる。

ここでまず見逃せないのは、菊と胡蝶蘭の展示ブースで、千態万状の菊と胡蝶蘭の素晴らしく優雅な香りは一見の価値あり。次に熱帯雨林館では、川が流れ生い茂った熱帯の木々がアマゾンを模した環境を作り出し、このガラスで作られた人工的な温室の中で数十種類もの熱帯性果物が繁殖している。中国風の庭園の小路を通り、次は砂地植物エリアで世界中の砂地植物が集められている。  各エリアそれぞれ全く違った世界である、色彩豊かで、滝は飛沫をあげ、谷底は静寂に包まれ、花香漂う、驚くべき様々な世界が広がっている。

南通は北半球にあるが、ここでは最新技術や知恵を用い、都市に住む人々の為に世界中の植物を展示しており、忙しい日常を過ごす人々を静かに癒やしてくれる。

嗇園

嗇園は南通市にある最大規模の天然植物園で、ハンカチノキや台湾杉等の珍しい200種類の植物がある。総数は数万株以上で、ここの良質な空気は高いマイナスイオン含有量で南通の“天然の酸素バー”となっている。またここは清時代末期に活躍した政治家張謇の永眠の地でもある。

張謇は南通に多くの学校や工場を作り、彼の提唱した“実業救国”の理念は近代中国の工業と教育の発展に大きな影響を及ぼした。また、彼は都市における樹木の重要性にも注力しており、学生に植樹活動への参加を促し、植物実験施設の建設や“植物節”などの催しを中国に根付かせた。南通人は彼のこの思想を引き継ぎ、嗇園にボランティア植樹センターを作り上げた。多くの南通市民がここを訪れ植樹活動を行っている。

嗇園を他の江南庭園と比較すると、ここは比較的静かで落ち着いている。 雨が降れば紅葉に染まった葉を洗い、嗇園は四季様々な色を抱き、月日の流れを受け止めている。

秋は歌である。南通の秋の歌は、温かい水であり、美しい花、朽ちることのない緑、そして都市の夢幻花園である。