淮安:運輸によって生まれた精緻な淮揚料理

長い歴史を持つ運河は一本の玉帯のように、淮安古城内を通り抜ける。運河によって発達した漕運のおかげで、淮安は南北各地の貨物の集散地になった。官署や商人の船が絶えずに運河を行き来し、異なる地域の人々がここに集まり、南北美食の長所を吸収しながらどんどん革新する淮揚料理を生み出した。自然に、淮安も淮揚料理の主要発祥地、伝承地となっている。

原材料の選択といい、包丁捌きといい、調味といい、淮揚料理は細心の注意を払って丁寧に作り上げることを重視し、気韻を求める。淮揚料理の調理はまるで詩を書くことや画を描くことのように、中国の伝統的な文化薀蓄が深く込まれている。味付けには、淮揚料理は爽やかでありながら味気ないようにしない味を良いとする。「一食に半分が精進」という肉料理と野菜料理との組み合わせがよく見られる。

文楼湯包

淮安の百年老舗文楼には、その蟹黄湯包が看板料理で、淮揚料理中の代表的な点心系料理だとされている。湯包の餡は豚肉の皮、角切りの鶏肉、豚肉、カニミソ、干しエビ、竹の子、香辛料、紹興酒等の十二種の原材料を混ぜて作ったもの。まずは餡が液状になるまで加熱し、それから冷却して固体にした後、皮に包む。蒸籠に入れて蒸したら、おいしいスープが薄くて透明に近い皮の中でゆらゆらと揺るぐ様子が見える。スープを一口啜ると、そのうまみが舌先を包み、誠に味わい尽くせない味だと言える。

淮安軟兜

軟兜は「タウナギ」とも呼ばれる。炒めた後、お箸で挟むと、柔らかく垂れる様子が子供の腹掛の帯のように見えるから、「軟兜」だと名付けられた。これが淮揚料理の中でも最も名高い一品だと言っていい。江淮地域の新鮮なタウナギを選び、その背中の肉を取って、揚げ鍋に入れて強火で調理する。お皿に載せると、色が黒くてつやがあり、タウナギ背中の肉が細長く、脂がのって美味しくてお年寄りや子供にも向いている。

平橋豆腐

名前が質素だが、平橋豆腐は紛れもなく淮揚料理中の名物である。伝説によると、乾隆皇帝がこれを食べたら大賞賛したから、この料理も江淮地域で名を馳せるようになったという。平橋豆腐を作るのに、結構包丁捌きが試される。豆腐を雀舌ぐらいのサイズの菱形にカットし、賽の目切の鶏肉、賽の目切のシイタケやシャンツァイのみじん切りと配合してから、フナとチキンスープを使って味付けする。澱粉でとろみをつけた後、胡椒とねぎのみじん切りで飾る。仕上げた平橋豆腐は、玉石のように純白で、スープが滑らかで、香りも濃くて鼻につく。

究極な包丁さばきで、食材本来の味を引き出す。純粋でまろやかな味を求めながら、見た目をもきれいにする淮揚料理は「和、精、清、新」という特徴を持って、江蘇人の精緻な料理に対する追及を如実に語っている。この点は、同じく淮揚料理で名が響く揚州でも十分に表れている。揚州の名物である獅子頭、文思豆腐、燙乾糸が揚州の名物もとても精緻な料理である。