南通に行って耽美な秋の告白に耳を傾ける

「一葉落ちて天下の秋を知る」。秋の静かな到来は、黄色く色づいた枯れ葉がふいに目の前をくるくると円を描きながら落ちていく様子で気づくものだ。南通の秋は静かで心地よく、この季節限定の優しく遠回しな告白の言葉をあなたへと送ってくれる。街の片隅はすでに秋の装いへと衣替えしているし、山林の古道、古い庭園、郊外の公園、そのそれぞれが色とりどりに色づいて詩の趣を感じさせる。さあ、外に出て秋の足どりを追いかけよう。そして心動かす秋の愛のささやきに耳を傾けよう。

 

狼山国家森林公園

秋の色がだんだんと濃くなってゆく、そんな時期はピクニックに出るにはちょうどよい。狼山国家森林公園は江蘇省省級の風景名勝区で、南通から南に6キロ離れた長江北岸地点に位置し、軍山、剣山、狼山、馬鞍山、黄泥山の5つの山から成る。ここではよく晴れた青空の下、街をぐるっと囲む長江と海、5つの山の色、そして大空が一体となって味わいを生み、大自然の美しい景観を描き出すのだ。

狼山を歩くと、まるで庭園をぶらついているかのような錯覚を覚える。水の流れ、小さな橋、東屋や古い建物、山間に赤く美しく色づくフウ、モミジ、金色のイチョウ……道中の風景がまるで江南の園林を描いた古い絵巻物のように次々と目に映る。山頂まで登ると高く林立した木々のなかに古寺院が見える。その壁は黄色く、瓦は黒い。万里の長江が忽然と目の前に姿を現す。たくさんの船が上流に浮かんでいて、先を競うように前へと進んでいる。秋の水の流れが空と一色となり、心はゆったりと心地よくなる。

狼山と隣り合う軍山は朝の鍛錬に訪れる人が絶えない。歩いて登ると、山間の独特の静の美が感じられる。道中耳にするのは風の歌であり、目にするのは山も川も赤く染める鬱蒼と茂った森である。大山門崖、水雲窟窪など、名勝古跡も多く、山頂には張謇氏(後述)が創設した全国初の民間気象台もある。ゆったりと心安らぐ木陰もあるので、疲れたなら軍山南端の緑の原っぱでテントを張ってキャンプをしながら小休止しよう。そして大自然の胸に抱かれながら秋の呼吸に静かに耳を傾けよう。

南通博物苑

南通博物苑は風景が美しい濠河の畔に位置する。中国初の公共博物館だ。中国近代の実業家である張謇氏によって創設され、100年あまりの歴史がある。博物園はしんと静かで、さっぱりと上品なスタイルだ。主要な建築は南館、中館、北館の展示館だが、ほかにも藤東水榭、遅虚亭、風車、給水塔など、目を楽しませてくれる景観向きの建築もあり、思わず江南の古い庭園のなかを歩いているかのような気分になる。のちから建てられた新館の館蔵品も各種歴史文化財、民俗物品、自然標本など、きわめて豊富だ。なかでも南通地方の風土民情が反映された民族品物、古代の手工業品物は見る者を楽しませてくれる。

南通博物園の秋は、まるでそこの陳列品と同じように、訪れる人々を驚かせ、去りがたい気持ちにする。北門から入園すると、園内でいちばん濃い色彩を見ることができる。フウ並木の小道では炎のような紅葉とまばゆい朝焼けが目に映る。木の下では子どもたちが楽しそうに遊んだりふざけたりしていて、彼らが飛んだり跳ねたりするたびに、さらりさらりという秋の旋律が聞こえてくる。また、園内をゆっくりと歩き、新館や旧館に入り、収蔵されている文化財を鑑賞したり、英国式の小さな建物「濠南別業」に入り、張謇氏の輝かしい一生について知るのもいい。「濠南別業」でほんの一時足を止めたあとは、博物園で最も美しいポイント――南門のイチョウに行ってみよう。ここには蒼天にまっすぐ伸びる黄金のイチョウが数本あり、激動の社会を潜り抜けてきた中華民国時代の建築や現代式中国建築と引き立て合いながら、きらびやかで美しい油絵作品を描いている。南通博物苑では、文化財というパートナーのおかげで草木でさえいくばくかの優雅さを帯び、それらは人の心を和ませる秋の雰囲気を敷地内へと放出しているのだ。

如皐水絵園

如皐水絵園は南通如皐市北東の片隅に位置している。400年あまりの歴史を有し、「中国江南園林建築の孤本代表」と称されるここは、江海平原という台座に嵌められた一粒の真珠である(孤本とは世に一つだけ伝わる代替可能な物のことを指す)。

水絵園と言えば人々は誰もが羨んでやまない冒辟疆と董小宛の親密かつ熱烈な愛の物語を思い浮かべずにはいられない。明代の末、その時代の四大才子の一人であった冒辟疆は王朝の交替にあたって官職を捨てた。それはひとえに「秦淮八艶」の一人とされる董小宛の傍で隠居し、心を園林に託すためだった。その園林こそが水絵園である。ふたりの乱世の愛は満ち足りたものであった。そしてその美しい愛により水絵園の名も天下に広く知れ渡り、「中国一の恋人文化園」と称賛されることになったのだ。

この園林は悠久の歴史を有するが、それだけではない。ここの水上楼閣には江海の風情をきわめて有しているのだ。園内をぶらぶらすると、古く素朴な東屋や楼閣の一つ一つを水の流れが繋いでいる。小さな橋、水面にきらめく光、ここに流れているのは人を惑わす江南の水郷のあでやかな姿だ。実りの秋になると、園内のイチョウ、ソフォラ、フウなどの葉が次々と変色して入り交じる。それはまるでとても美しい秋の服へと着替えているようにも見える。また、水絵園には如派盆景園(古澹園)があり、中国盆景芸術7代流派の一つである「如派」盆景の逸品が大量に収蔵されている。なかには樹齢約1000年のシダレイトスギの盆景、世界最大のゴヨウマツの盆景などがあり、非常におすすめだ。ほかにもまだある。園内では江蘇省の無形文化遺産に登録されている人形劇「如皐木偶劇」が通年演じられている。足を運んでその演技を見たり、あるいはステージに上がって体験したりしてみれば、伝統の文化・芸術が持つ魅力を至近距離で味わうことができるだろう。

秋の水絵園、そこでは木々から透ける陽光が地面に描くまだら模様、色とりどりの落ち葉、そして水面と光とが交錯する。その様子は仙境のように美しい。ぜひここを訪れ、穏やかで安らかな雰囲気に浸りながら江南園林の詩情画意を心行くまで味わおう。

洲際夢幻島

涼しい気候は外に繰り出し、秋の旅に出るのに最適だ。この秋、訪れる人々を待ち受ける観光地がまたひとつ長江デルタ地域に誕生する。その名は洲際夢幻島。ネット上で「ここは必見と」と人気のスポットだ。洲際夢幻島は通州区開沙島に位置し、その面積は約1.1平方キロメートル、「沙、水、漁業、農業」を特徴とする、長江に浮かぶ島の植物園である。空から俯瞰すると、まるで水という台座に嵌まった花園に見えるここは、河の畔の生態の美しさを余すことなく見せてくれる場所だ。

ここには草原、棚田、そして海のように広い花畑があり、「奇幻火山群」「浪漫桜花谷」などの核心景観が設けられている。また、ジュラ紀にタイムスリップして恐竜たちの世界を訪ねることもできる。夢幻島の中心区には約8600平方メートルのヌマスギ林がある。ここには数千株のメタセコイヤ、タチラクウショウ、ヌマスギが植えられていて、秋になると深紅、金、鮮緑など鮮やかに煌めき、濃淡異なる様々な色に覆われ、見るものを虜にする。夢幻島の神秘はまだある。3Ⅾの要素を取り入れているのだ。それによって観光客たちに娯楽やレジャーの時間を楽しんでもらうと同時に、私たち人類の未来に関する思考を体験してもらおうというのだ。

洲際夢幻島のベールがはがされるのは、もうすぐだ。この秋はみんなでここを訪れ、その秘密を探ってみよう。

南通森林野生動物園

空高く、きりっと空気の澄んだこの季節は親子で出かけるのにもうってつけだ。お子さんと一緒に森林野生動物園を訪れ、動物たちの世界の神秘を探索してみてはいかがだろうか。

南通森林野生動物園は南通市港閘区通劉路に位置する。総敷地積約2平方キロメートルの園内には、それぞれの地域を代表する世界各地の希少動物300種あまり、野生動物20000頭(匹)――コクチョウ、ニホンジカ、フラミンゴなど――が集められている。長江デルタ地域では最大規模の野生動物園の一つである。

園内は自家用車を利用できるサファリエリアと歩行エリアに分かれていて、道すがらカンガルーに触れたり、キリンに餌をあげたりできる。また、国際大サーカスやアシカショーなど、各種テーマのショーや学習コーナーを見ることもできる。歩行エリアにはホワイトタイガーレストランとレッサーパンダレストランも設けられており、自由に見学したり休憩や食事をすることができる。食事をしながら、遠くで水遊びするベンガルトラや日向ぼっこするレッサーパンダをガラス越しに眺める、そんな不思議なレストラン体験の味わいは格別だ。

レッサーパンダを見たあとは、中国の国宝――ジャイアントパンダも見逃すことはできない。国宝家苑ではジャイアントパンダの兄妹「星輝(シンホイ)」と「星繁(シンファン)」が生活している。木登りしたり、笹を食べたり、気持ちよさそうに休んだり……彼らの一挙手一投足どれをとっても、どこか抜けていて可愛く、そのイメージは数えきれないほどのお客さんの心を動かす。彼らは動物園のスーパースターなのだ。ここを訪れ、「いちばん萌える国宝」に心を癒してもらいながら、彼らと一緒に美しい秋の日を過ごしてみよう。