忙しい日常の中、ふとした瞬間に訪れる“低エネルギー”な時間。
そんな時こそ、心と体をリセットできる場所を探してみようか?目を向けてほしいのは──南通。ここから、あなたの癒しの旅が始まる。
江蘇の「水の趣」の美しさは、南通において長江、黄海、そして内河が織りなす、まるで生命が躍動する一幅の絵巻物のように表現されている。ここでは長江が海へと注ぎ、黄海は詩のように波打ち、内河は絹のように街をやさしく包み込む。夏に訪れ、水とふれあえば、自然と心も癒されることだろう。たった5元で乗れる「通沙汽渡」の船に揺られれば、三層デッキから望む長江の風景は格別。夕陽が川面を赤く染め上げ、カメラでは捉えきれないほどの感動的な夕焼けが広がる。
長江の詩情あふれる風景とは対照的に、南通の海はより野性味に満ちている。ここでは、南黄海ならではの「海子牛(ハイツニウ)」と呼ばれる貝類の姿を見ることができ、足元にコリッとした感触があれば、しゃがんで手を伸ばしてみよう。そこには、ひょっとすると文蛤(ハマグリ)がひっそりと顔をのぞかせているかもしれない。
夜のとばりが降りると、濠河はまるで流れる瑠璃のように輝き出す。画舫に乗り込めば、ライトアップされた南通博物苑や張謇記念館が静かに目を覚まし、川面に映る城壁の影がゆらめき、まるで時をさかのぼる旅が始まったかのよう。濠河のナイトクルーズは、千年の時を越える没入型の光と影のショー。櫂の音と灯りのゆらめきの中で、古と今の風景が幻想的に溶け合う。
グルメもまた、エネルギーをすぐにチャージしてくれる存在だ。朝のはじまりに訪れたいのは、百年の歴史を誇る老舗「孟家蟹包」。湯気立つ蟹黄湯包(カニみそスープ入り小籠包)をそっと箸で割ると、江と海の恵みを凝縮した黄金のスープがあふれ出す。生姜と黒酢を添えて味わえば、その余韻はいつまでも心に残る。
南通の人々のDNAには、まさに「鮮」の一文字が刻まれている。長江の幸と海の幸が絶えず入れ替わり、旬の味覚が次々と食卓を彩る。中でも呂四漁港のキグチ(黄魚)は、身が繊細で旨みたっぷり。シンプルな調理だけで、その素材本来の味わいが引き立てる。
「天下第一の鮮」と称される南通のハマグリ(文蛤)は、ふっくらとした身が魅力。茶碗蒸しやスープ、炒め物からお焼きまで、どんな料理にしてもその豊かな旨みが際立ち、ひと口ごとに“鮮”の海に舌が泳ぎ出すような、贅沢な味わいを楽しめる。