宿遷春の手帳

手帳は旅を記録するいちばんの方法のひとつだ。プリントした写真を挟んで道中の美しい景色を残したり、自分が心で感じたありのままを紙に描き出したり……そして未来のある日、ふいにまたページを開くと、あのときの心の動きや楽しさが紙の上に再び飛び出してきて、そして胸に帰っていくのだ。それでは宿遷の春の手帳を開いてみると、そこにはなにが記録されているのだろうか。

三台山の開花状況

三台山のメインは山峰だが、ここの魅力はそれだけではない。ここでは春が来ると多種多様な花が力強く咲き誇るのだ。忙しない日常生活の一時停止ボタンを押して三台山のミニ機関車に乗り、木の海を抜け花の潮流を渡りながら大自然の優しさにどっぷりと浸かってみよう。

最初に止まる駅は梨香満園駅だ。ここではオオアラセイトウの花畑のなかにナシの木が植えられている。一本一本の枝に白いナシの花が満開となっている様子は雲か降り積もった雪のようだ。最盛期になるとオオアラセイトウたちが一年一度の鮮やかで美しい色彩で咲き誇る。

次に止まるのは天鵝湖駅だ。駅から遠くないところには梅園がある。梅は寒冬から暖春にかけて咲く花だ。遠くから眺めると野山全体を梅が覆っている。歩いていると梅の花の爽やかな香りがひとしきり香り、心に染み渡る。

三番目の駅は鏡湖駅だ。ここを降りると「衲田花海」がすぐそこにある。各種様々な色の花で織り成されたこの花畑では、チューリップ、カイドウ、ハクモクレンの花々がそれぞれそろって咲き乱れている。そのなかを行ったり来たりする、それはまさに春のなかを行き来することではないだろうか。

ひょっとしたらもう少し遠くまで足を伸ばしてみたいと思うかもしれない。それなら駱馬湖の岸辺が気晴らしに最適だ。澄んだ水と緑あふれる湖畔、春の花が咲き誇り、静謐で詩の境地に冨んでいる。春光と水の煌きが互いに引き立て合い、眼の奥に映える。

*春の花期情報

3‐4月:レンギョウ、アンズ、カイドウ、ナノハナ、ハクモクレン、モモ、フジ、サクラ、ナシ、オオアラセイトウ、チューリップ、ボタン

4‐5月:ハナビシソウ、ミカイドウ、シャクヤク、バラ、ヒナゲシ(グビジンソウ)、アリッサム、シバザクラ、バラ

美酒を一口味わう

宿遷の酒造りの歴史は1300年もの長きに渡る。この土地の良山秀水は洋河と双沟という二大銘酒を育んだ。そして宿遷も「中国白酒の都」として賞賛されることで、酒は現在この街ならではの表示記号、文化のしるしになっている。春、宿遷を訪問して美酒を一口味わわずにどうして「酒の都」に行ったことがあるなどと口にできるだろうか。

宿遷の無形文化遺産「洋河酒伝統醸造技芸」について知りたいなら、やはり洋河酒廠文化観光区に行かなければならない。洋河酒廠に足を踏み入れると、まるで空気中に充満する醇厚な酒の匂いが顔ってくるようだ。ここでは酒造り工芸の流れを観察し、職人たちが酒を手作業で瓶に詰める様子を現場で見ながら、昔ながらの酒造りの方法の伝統工芸を理解することができる。また、72度の原酒を味わい、強さのなかにも不思議な柔らかさと優しさがある神秘的な口当たりを感じることも可能だ。

双沟酒は大自然の変遷と人類誕生の過程を貫く深厚な歴史を持つ。前世紀、双沟鎮下草湾地区で1800万年前の猿人の化石が発掘された。科学者によってこの化石は類人猿がアルコールを含む果汁を飲んだあとに酔って死んだものだと実証され、「双沟酔猿化石」と命名された。このことは双沟酒が野生酒を起源とすることの裏付けでもある。双沟地区の造酒技術は商(殷)周の時代にはすでに十分成熟していた。現在の双沟酒文化旅游区は東で洪澤湖湿地、南で淮河に隣接しており、なかでもウイスキー産区は「世界三大湿地葡萄酒産区」と称されている。双沟酒文化の魅力に触れたいなら、双沟酒文化旅游区を訪れて双沟酒産業の「前世今生」を体験してみよう。

羅曼園の大作撮影攻略法

羅曼園は愛をテーマとした公園だ。駱馬湖湖畔の見逃せないロマンチックな必見ポイントになっている。春になると湖水が波打ち、鮮美な花々、生き生きと茂る草木に満ちるここは、カップルたちにとって理想のデートスポットであるが、さらには春の野外撮影にうってつけの場所でもある。まず、絢爛多彩なバラが咲き乱れているバラ園ではムード満点の春の大作を撮ろう。また、湖畔桟道の真ん中に立って果てしない駱馬湖を眺めながら爽やかあっさり上品な湖景の写真を撮ろう。この時期の純情沙灘(ビーチ)にあるのは暖かな陽光だけだ。ここをぶらぶらしながら、顔いっぱいに太陽の光を浴びながら撮影すると、写真に映るのはありのまままの幸せな姿だ。最後にユニークな造形の羅曼橋をゆっくりと歩き、音楽のように流れては去っていく湖水を感じ、落日の余光を浴びながら、今日一日のロマンチックなあれこれをそっと心にしまいこもう。