東台と出会い、ひと夏の時間を満喫する

夏、それはひとつの型に収まらない、さまざまなロマンが集まる季節だ。思う存分零れ落ちる陽光、広々とした木陰を作り出す森、沸き立つ潮の流れ、水滴したたるアイスキャンディー;まるですべてのものが夏というこの季節の躍動とともに自分を熱烈かつ存分にアピールしているかのようだ。盛夏は大自然のワルツなのだ。さあ、私たちもこの季節に近づいて、生き生きと律動するリズムのなか、一夏の時間を楽しもうではないか。

江蘇省沿海部中部に古い歴史を持ちながらも絶えず成長を続ける不思議な土地――東台がある。純粋で果てしない気質をこの地に与えた、海。自然の素朴かつ清浄な美しさを生み出す、森、湿地、そして網の目のように交わる水。ここはまるで夏の「寵児」だ。奥深い森を逍遥したり、あるいは海辺で波を追いかけたり、そして甘くて美味しいスイカをひと齧りしたりしてみよう。そうして夏の美しさをまるでキャンディーのようにポケットに入れて帰ろう。


林間の秘境ー黄海森林公園

もし猛暑酷暑の日に避暑や暑気払いをしたいのなら、東台黄海森林公園の扉を叩こう。3000ヘクタールを占める黄海森林公園は森林被覆率90パーセントを超え、空気中に含まれるマイナスイオンは4000に達している。ここをゆっくりと歩けば、青々としたメタセコイヤの木々の緑の障壁が森の奥から涼風を外へと送り出し、顔をそっと撫ぜる。

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メタセコイヤ林の上に架かる空中桟道をそっと歩くのもいい。林間の清涼な空気を通り抜けながら、広々と限りなく広がる緑の世界を見渡そう。あるいは筏に乗って、森の中を静かに漂い、水面を掠めるようにして飛ぶ鳥たちの姿を眺めてみよう。杉林の小道ではきっと、自然原生態の匠心の宝地――森林木工坊にも出会うことだろう。ほのかな香り漂う木製部品はみな職人の注意深い仕事によるもので、きっとあなたも思わず木工の楽しみを体験してみたくなるだろう。

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黄海森林に来たのなら、童話の世界の木のお家を体験せずにはいられない。林間の空き地で身を寄せ合うようにしている小さな木の家たちは、どれも丁寧な造形で、設備もすべて揃っている。扉を閉めるとまるで大自然の胸のなかに寝転んでいるような気持ちになり、耳をそばたてると森の内緒話が聞こえ、天窓からは夏の夜の満天の星たちが見える。いらだちや不安はすべて自然に癒され、深い静けさの奥底に帰ることができる。

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満ちては引く潮ー条子泥湿地

最近、東台条子泥観光地は省級生態観光モデル区に選ばれた。黄海生態区南側に位置する条子泥湿地。そのユニークな名は、ここを流れる河川の支流がまるで条(枝)のような形状をしていることからついた。大自然の傑作であるここは世界自然遺産にも選ばれている。満ち引きする大海、そして長江、黄河の水の流れが昼夜も惜しまず轟々と運んできた土砂がゆっくりと堆積することで、ここには広大な面積かつ縦横無尽の干潟が形成された。条子泥湿地は渡り鳥たちの東アジア―オーストラリア間飛行コースの中心ポイントでもある。数え切れない渡り鳥たちが停留し、羽を休め、餌を探し、換羽するここでは、ズグロカモメ、ヘラシギ、クロツラヘラサギ、シロチドリなどの鳥たちをいたるところで見ることができる。   

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岸部に立ち、頭をもたげて遠くを望めば、空にはうっすらと雲がかかり、そよ風が吹く。海と空が交わり、風にはうっすらと海水の香りが漂い、心安らぎ晴れ晴れとした気持ちになる。裾をまくり、裸足で湿地の肌触りを感じたり、干潟で海水に沈む小さな蟹や貝殻を拾ったり、日の入り時分に群れ飛ぶ無数の鳥立ちを眺めたりしてみよう。ひょっとしたら湿地の可愛らしい妖精――餌を探しに姿を見せたヘラシギに出会うことができるかもしれない。

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夏の日の甘さ東台西瓜

中国の市井の人々の間では「夏のスイカは医者いらず」とよく言われる。中国初の西瓜の里として、東台のスイカは赤だろうと黄色だろうと甘くジューシーで、口当たりはきめ細かい。夏真っ盛りに欠かせない暑気払い担当だ。

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東台のスイカにはこんな民間伝説がある。一説によると漢代以前、この世には甘くて美味しいスイカがなかった。そこで、七仙女が自ら私蔵する瑶池の仙瓜の種を西渓に持ってきて、董永(中国の孝子伝説の主人公の一人)とともに西渓南東の一角、長青という高い坂の上に種を植え、甘美な井戸水で心を込めて水をやると、深緑で丸々とした西瓜が実った。客を親切にもてなす仙女は、その西瓜の種を働き者の同郷の人々に送り、東台の人々は代々これを栽培、こうして名高い東台西瓜が生まれたという。また一説によると、范仲淹が西渓に塩官として赴任したとき、その母が西瓜を好んで食べたため、汴京(べんけい、開封の古称)から西瓜を取り寄せ、親孝行した。そして西渓に種を蒔き、この土地での栽培に成功したため、東台の西瓜は広く名を馳せることになったという。

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いずれの伝説にしろ、そこには人々の甘い期待が込められている。東台の夏の夜、夜風に吹かれながら、よく冷えた西瓜を半玉抱え、すっきりとした甘さを味わい、心をリフレッシュさせれば、夏の日のうっとうしさなんてたちまちきえてしまうのだ。